[文]佐々木俊尚(ジャーナリスト) [掲載]2012年03月11日
著者:神田昌典 出版社:PHP研究所 価格:¥ 882
Amazon.co.jp セブンネットショッピング 楽天ブックス 紀伊國屋書店BookWeb
■驚きの断定的な未来予測
カリスマ経営コンサルタントとして、成功法などのベストセラー本を多数送り出している著者の新作は、日本社会の将来予測と、その中でどう生きればいいのかを語っている。「中国は2025年から衰退」「日本は2020年から一気に下り坂」「アイフォーンは2016年で製造中止」「2024年に会社はなくなる」「2025年には日中韓の儒教経済圏」など、びっくりさせられる予測が断定的に多数描かれている。説得力のある論もあるが、一方で根拠の不明な予測も少なくない。しかしそういう虚実ないまぜの語り口が、大道芸的な気持ちよさを醸し出しているとも言える。
いまや未来は不透明で、政府の対応は常に後手に回り、政治家は将来を語る言葉を持たない。有識者たちも時代の変化に足をすくませている。こういう時代状況の中で、断定的な未来予測と「これからの日本は明るい」と説く本書がベストセラーになった。大半の読者は「大言壮語に過ぎるのでは?」と読んでいるのだろう。しかしそういう大言壮語にでも託さないと未来が語れない時代になってしまったということなのだ。
人生論を語る本書は自己啓発書だ。自己啓発も、この5年ぐらいの間にリーマンショックや震災を経て著しく変化した。端的に言えば、「年収を増やす」から「いまの時代を生き延びる」への変化である。カリスマ自己啓発作家の著者はさらに一歩進んで、ここに明るい日本の未来の可能性を提示しようとしている。
いま自己啓発という分野は、日本のビジネスマンたちの集合的無意識を抽出する装置として駆動している。だとすれば本書の登場は、今の日本人の希望へと向かう心境の変化をリアルタイムに捉えた現象として、言祝(ことほ)ぐべきなのかもしれない。
◇
PHPビジネス新書・882円=8刷14万部

